<県立大学法人化反対声明>

 9月22日、兵庫県立大学改革委員会は、県と大学に対し、公立大学法人へ移行すべしとの提言をまとめた。
2011年2月に策定された第2次行革プランに「平成25年を目途に法人化移行に向けての検討」が記載された。
兵庫県立大学改革委員会は、この第2次行革プランに基づき第三者による外部委員会として設置された委員会であり、この提言を元に今後、県は法人化移行に向けた検討を進めることとなる。
すでに法人化された他大学の事例では、多くの課題が指摘されていること。さらには根底に県行革があることなどから、県立大学に働く教職員の労働条件の維持向上を求める我々、兵庫県職員労働組合としては強い懸念を感じざるを得ない。
 あらためて我々は県立大学の公立大学法人移行に反対の意を表明するものである。
我々の懸念と反対の理由について以下に項目ごとに述べる。

 まず一つ目に大学設置にかかる県の公的責任の放棄につながるのではないかということ。
県が県立大学を設置する意義は何か。県民の資質向上のため安価な高等教育と研究施設を提供すること、また県内唯一の公立総合大学であり、地域における「知の拠点」として地域発展に貢献すること、と我々は解釈している。
公立大学法人化によって経営形態は県から切り離される。今後、大学法人の経営が悪化した際、授業料の値上げ、教員削減など経営合理化が大学独自の判断で行えることとなる。ましてや経営破綻に至る場合には民間売却も選択肢となる。
 文部科学省のまとめた「国立大学法人化後の現状と課題について」(中間まとめ)には、「教員数は増加しておらず、常勤職員の人件費は減少し、教員1人当たりの教育負担や事務負担が増加した」と報告されている。
このような懸念があるなか、目先の経営改善のために、県は、公的責任の一環である当初の設置目的を脅かす独法化の道を安易に選択して良いのか。

 2つ目は県からの運営交付金が削減されていくことで教育研究活動や学生サービスに影響がでるのではないかということ。
 独法化すれば、県からの資金の流れはこれまでの県からの予算令達ではなく、運営交付金として支弁される。県財政の逼迫からこの間、大学の予算も削減されてきた。この点においては運営交付金についても同じ傾向となるのであろうが、一方で独法化により予算単年度主義の枠が取り払われるので、外部資金獲得が現行よりしやすくなると「提言」は言う。このことは運営交付金のさらなる削減の理由とされかねない。教員は研究のための外部資金確保でなく、経営のための外部資金確保を求められるのである。これでは研究機関のあり方の変質にまでつながりかねない。前述の文科省の(中間まとめ)でも「研究時間や学術研究論文の数は減少し、基礎的研究など重要な学問分野の継承発展に影響が出ている」と報告されている。
また外部資金を用いる研究活動は理工系分野に偏っており、文科系では額、件数ともに極めて少ない。外部資金獲得を前提とした経営方針は旧神戸商科大学、旧姫路短期大学にとっては活動を制約されることにつながっていく。(中間まとめ)でも「人文学分野の教員数は一貫して減少」と報告している。
一方、事務職員にとっては、外部資金の恩恵は受けないため、運営交付金の漸減は業務執行に直接的に影響する。経費削減は教員や学生からの苦情の増加ともなり、また必要なことさえできないといったジレンマは、事務職員への強い心のストレスともなりかねない。

 3つめは、大学自治の精神が後退するのではないかということ。
法人化のメリットの中に学長(理事長)権限強化による意志決定の迅速化が上げられている。「提言」の現状分析ではキャンパスが複数地域に分散しており大学全体の意志決定に時間を要すると記されている。県立大学は元々、別個の単科大学を統合してきた経過がある。
大学の自治とは憲法23条に根ざし、通説として「研究の自由」「研究発表の自由」「教授の自由」と言われており、運営上では教員の人事、施設管理、学生管理にまで及ぶ。県立大学の統合経過からすれば各キャンパスの自治も保証されて然るべきである。
法人化によって各キャンパスの自治は保証されるのだろうか。
第2次行革プラン策定に先駆け、学内のコンセンサスもないまま、学長が独断で法人化移行を進め、教員、職員とも突如の不安と混乱に捲き込まれた。このような経過があるだけに、「提言」にある権限強化には強い懸念を感じるものである。

4つめは、教員、職員の身分と労働条件に関する危惧である。
現在は教員も職員も地方公務員である。独法化すれば教員は法人職員へと身分が変わる。
職員については当面は県職員のまま派遣で従事し、新たに採用する法人職員へ順次切り替えていく方針が示されている。
 教員については身分移管だけでなく、「提言」の中の制度設計では、能力給の導入、フレックスタイムの導入など、大きな労働条件変更までもが記載されている。
職員は県職員の身分のままで、賃金も従来と変わらないとのことであるが、従来からの県当局との労使確認等が法人に引き継がれるか疑問がある。例えば今後、法人判断による合理化が行われた場合、職種によっては県の職場に戻っても働く場所がない職種もある。人事異動になじまない職種では派遣期間法定制約の不安もある。
改革委員会「提言」に先立ち、学内の将来計画委員会が最終報告を提出した。報告書の結論部分に25年4月移行が明記されている。結論でいきなり記載されたものであり、前段で移行時期の必然性や根拠の検討は記述されていない。乱暴極まりない報告である。仮に移行の意志決定がされれば、それ以後の準備業務は膨大となることが予想され、未だその全容は見えていない。にもかかわらず時期だけが先に決定されれば、準備業務に携わる教職員の負担は想像を絶する事態となりかねない。
 このように法人化移行は、賃金労働条件面において教員も職員もデメリットしかない。

 以上の理由をもって、我々は県立大学の公立大学法人化には反対の立場を表明する。
今後、我々は組織内、組織外に働きかけ、県の政策変更を求めてとりくみを強めていく所存である。
併せて県当局に対しては、組合員の身分と労働条件を守り抜くため、直ちに交渉の場の設定を求めていく。

                                                             2011年9月26日
                                                           兵庫県職員労働組合
                                                         兵庫県従業員労働組合